CASE FILE No.08 ── 退職
失業保険と開業のタイミング:再就職手当という選択肢
── 「もらい切ってから開業」だけが正解ではなかった。
- 「開業届を出すと失業保険はもらえなくなる?」
- 「もらい切ってから開業するべき?」
- 「再就職手当って会社に就職しないとだめなんでしょ?」
退職して開業する場合、失業保険との付き合い方で、もらえる金額が大きく変わります。 ハローワークの公開情報で調べた範囲を、開業届を出す前に整理しておきます。
開業は「就職」扱い。基本手当は止まるが、 残日数が1/3以上あれば再就職手当(残日数×60〜70%)の対象になり得る。 方針はハローワークで自分のケースを確認してから。
前提: 開業すると基本手当は止まる
基本手当(いわゆる失業保険)は「求職中」の人への給付です。 開業届を出して事業を始めると求職中ではなくなるので、基本手当の対象から外れます。
ここで「もらい切ってから開業しよう」と考えがちですが、 その間は開業の時間を失っているわけで、必ずしも得ではありません。
再就職手当: 開業でも対象になり得る
再就職手当は早期に再就職した人への一時金で、 ハローワークの案内には事業を開始した場合も対象に含まれることが明記されています。
基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上
支給額は残日数で2段階です。
| 支給残日数 | 支給額 |
|---|---|
| 所定給付日数の 2/3以上 | 残日数 × 70% × 基本手当日額 |
| 所定給付日数の 1/3以上 | 残日数 × 60% × 基本手当日額 |
(基本手当日額には上限があります。金額は毎年改定されるので窓口で確認)
数字で見る: どれくらい違うのか
計算式は「残日数 × 60〜70% × 基本手当日額」です。仮の数字を入れてみます (日額・上限は毎年改定されるので、自分の数字は雇用保険受給資格者証で確認してください)。
例: 所定給付日数90日・基本手当日額5,000円の人が、 失業認定を1回受けた時点(残日数80日 = 2/3以上)で開業した場合:
- 再就職手当 = 80日 × 70% × 5,000円 = 28万円(一時金)
- 一方、もらい切る場合 = 90日 × 5,000円 = 45万円。ただし開業を約3か月先送りにすることになる
差額の17万円のために3か月待つかどうか、という比較になります。 事業を早く始めるほど売上の立ち上がりも早まるので、 「もらい切るのが常に得」ではないことが数字で分かります。
受給の流れ(開業予定者版)
- 退職 → 会社から離職票を受け取る
- ハローワークで求職申込み・受給資格の決定
- 7日間の待期(この間の開業は手当の対象外になり得る)
- 自己都合退職の場合は給付制限期間がある(期間・条件は改正が入るので窓口で確認)
- 開業予定日を伝えて、再就職手当の対象になるかを窓口で確認
- 回答を踏まえて開業届の提出日を決める
判断の型
- 離職票が届いたら、まずハローワークで受給資格の決定を受ける
- 自分の所定給付日数と基本手当日額を把握する
- 開業予定日を伝えて、窓口で再就職手当の対象になるかを確認する
- その回答を踏まえて開業届の提出日を決める
よくある質問
開業準備(調査や届出の検討)をしているだけでも対象外ですか?
準備の段階の扱いは状況によります。ここも窓口で確認する項目に入れてください。
結局、どちらが得ですか?
「もらい切る」「すぐ開業して再就職手当」のどちらが得かは残日数と日額で決まる計算問題です。 数字を持って窓口に行けば、その場で比較できます。

