原文解説 ── タックスアンサー No.2072

65万円控除は複式簿記だけでは取れない(青色申告特別控除の3段構え)

── 申告が1日遅れるだけで、65万円の控除は10万円に落ちる。

記録者:ハジメ @kaigyomemo ・ 本人が手続き中 ・ 読了 5分

公開 2026年8月30日最終更新 2026年8月31日

  • 「複式簿記にすれば、65万円もらえるんでしょ?」
  • 「55万円と65万円って、何が違うの?」
  • 「申告が期限に間に合わなかったら、控除はどうなるの?」

青色申告の承認申請を調べたときに、「その先」がずっと気になっていました。 承認を取ったとして、65万円は何をすれば満額もらえるのか。 国税庁のタックスアンサー No.2072 を原文から読み解きます(令和7年4月1日現在法令等)。

先に結論

65万円は「複式簿記」+「期限内申告」+「e-Tax か 優良な電子帳簿」の3点セット。 どれか1つ欠けるたびに、55万円 → 10万円と段が下がります。

自分の所得でいくら安くなるかは、青色申告の節税シミュレータで試算できます(この記事と同じ国税庁の表で計算しています)。

控除は3段階。何で分かれるか

図1控除額は要件の積み上げで決まる。「青色申告なら65万円」ではなく、65万円は一番上の段。

自分がどの段にいるかは、この順で判定できます。

  1. 複式簿記で記帳しているか

    いいえ → 10万円。単式簿記(簡易な帳簿)はここで確定します。

  2. 確定申告期限(翌年3月15日)までに申告したか

    ここが一番の落とし穴

    いいえ → 10万円。複式簿記でつけていても、です。

  3. e-Tax で提出したか(または優良な電子帳簿)

    はい → 65万円 / いいえ(紙で提出)→ 55万円。

図2判定は3問だけ。②で落ちる人が一番多い(そして一番もったいない)。

55万円の要件(原文)

まず土台になる55万円。原文の要件は3つです。

原文

(1)不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること。

(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書および所得の金額の計算に関する明細書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること。

出典:国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(2026-08-30 参照)
国税庁タックスアンサーNo.2072の55万円の青色申告特別控除の要件。(1)不動産所得または事業所得、(2)正規の簿記の原則による記帳、(3)貸借対照表等を添付して確定申告期限までに提出、の3つが書かれている
原文の該当箇所。出典:国税庁 タックスアンサー No.2072(2026-08-30 参照)

読み替えると: 事業をやっていて、複式簿記でつけて、決算書を付けて期限内に出す。 (3)に期限が埋め込まれているのがポイントで、次の節につながります。

現金主義の特例を選ぶと55万円は受けられない、の補足を読む

原文の注1にあるとおり、現金主義による所得計算の特例(前々年分の事業所得と 不動産所得の合計が300万円以下の人が届出で選べる、現金の出し入れ基準の計算方法)を 選択している場合、55万円の控除は受けられません(つまり65万円も不可、10万円のみ)。

また注2により、事業の所得が55万円より少ない場合はその金額が上限になります。 控除で所得がマイナスになることはありません。

一番の落とし穴:申告が1日遅れると10万円

ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。

ありがちな誤解

青色申告なら、いつ申告しても65万円引ける

承認を取った時点で権利が確定している、という感覚。

実際(原文どおり)

期限内に申告した場合だけ55万・65万

期限に遅れた年は、要件(3)を満たせず10万円になる。

図3「青色の承認を取っている」と「65万円もらえる」の間には、期限内申告という条件が挟まっている。
原文

(注4)還付申告書等を提出する方であっても、55万円または65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出する必要があります。

出典:国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(2026-08-30 参照)
国税庁タックスアンサーNo.2072の注4。還付申告書等を提出する方であっても、55万円または65万円の適用を受けるには確定申告期限までに提出する必要がある、と書かれている
還付申告(税金が戻る側の申告)でも期限内提出が要る、という注記。出典:国税庁 タックスアンサー No.2072(2026-08-30 参照)

65万円にする2つのルート

55万円の要件を満たしたうえで、さらに次のどちらかを満たすと65万円になります。

原文

イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること。

ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

出典:国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(2026-08-30 参照)
国税庁タックスアンサーNo.2072の65万円の要件。55万円の要件に該当した上で、イ 電子帳簿保存、または ロ e-Taxによる申告のいずれかに該当すること、と書かれている
65万円の追加要件はイ・ロの二択。出典:国税庁 タックスアンサー No.2072(2026-08-30 参照)
ルートロ:e-Tax で申告 ルートイ:優良な電子帳簿
やること 申告書と決算書を e-Tax で期限内に送信 仕訳帳・総勘定元帳を「優良な電子帳簿」の要件で保存
事前の届出 不要 必要(一定の事項を記載した届出書)
ハードル 会計ソフトからそのまま出せる 要件が細かく、個人が自力で満たすのは重い
ルートイ(優良な電子帳簿)の注意点を読む

原文の注記によると、令和4年分以後にイの経路で65万円を受けるには、仕訳帳・総勘定元帳を 優良な電子帳簿の要件で備付け・保存したうえで、一定の事項を記載した届出書の提出が 必要です。また、e-Tax で送る場合も、決算書等をイメージデータ(スキャン画像)で 送信することはできません。会計ソフトからのデータ送信であれば通常は問題になりませんが、 「PDF で送ればいい」は通らない、ということです。

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よくある質問

期限後申告になってしまったら、控除は本当に10万円ですか?

はい。55万円・65万円の要件には「確定申告期限までに提出」が含まれるため(原文(3)と注4)、 期限後申告の年は10万円になります。翌年、期限内に申告すればまた55万・65万に戻れます。

そもそも青色申告にしていない場合は?

この控除は青色申告者だけのものです。まず青色申告承認申請書を 期限内(新規開業なら開業から2か月以内)に出しておく必要があります。 承認申請を忘れた年は白色申告になり、控除は0円です。

貸借対照表なんて作れる気がしません

自力で作る必要はありません。会計ソフトに日々の取引を入れていれば、 貸借対照表と損益計算書は自動で出てきます。65万円の要件で自分が守るのは 実質「期限内に申告する」だけです。

売上が小さくても65万円引けますか?

控除できるのは所得(もうけ)が上限です。原文の注2により、事業の所得が55万円(65万円)より 少ない場合はその金額まで。控除で所得がマイナスになることはありません。

この記事は税理士の監修を受けていますか?

受けていません。国税庁タックスアンサー No.2072(令和7年4月1日現在法令等)の原文を 引用し、出典と参照日を明記する形で書いています。個別の判断は税務署か税理士に確認してください。

まとめ

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